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2008年9月 5日 (金)

リキ物語 第5話

 犬ぞり隊訓練中
 そり犬としてのリキのポジションは決まっています。左側の先頭です。このポジションはリーダー犬のポジションであり、そり犬にとって、とっても名誉あるポジションです。彼は決してこの場所を他人に渡そうとはしません。頑固に守り抜いています。ただし、リキの所属する犬ぞりチームはたいていは犬一匹だけです。また、生活環境が雪国ではないので、引っ張っているのは、そりではなく、たいていは自転車です。したがって、リキは必ず自転車の左前を走ります。ハーネスと引き綱は、イヌイットの人々が登場する記録映画の犬ぞりシーンを、目を皿のようにして見て、登山用品のテープを縫い合わせて造りました。引き綱は5m、自転車のサドルに縛り、ハンドルの上を通ってリキのハーネスにつながります。
 リキ用自作ハーネスは、海に飛び込んでしまったリキをカヌーやヨットハーバーの桟橋の上に引き上げるのにも、とっても役立っています。ちなみに、さんリキは水泳大好き大得意で、水があると、なんとか理由を見つけては飛び込もうとします。人が釣り竿をふってルアーを飛ばした。それドボン。リキの釣り場荒らしは有名です。ヨットを桟橋に付けるときにだれかがロープを投げた。それドボン。
 犬ぞり訓練に話を戻します。どうも、さんリキは自転車も仲間と思っているらしく、スタートの時に自転車の走りだしが遅いと、「こらーもたもたするな、Go Go Go」と自転車の前輪を噛んで叱咤します。自転車の前輪を二番犬と考えているようです。何かの映画で、本物のそり犬が、もたもたしている犬の足を噛んで、叱咤しているのを見ました。羊の世話している牧羊犬も、羊を追うのに後ろ足を噛むようです。自転車君を犬族の仲間か、もしくは自分が世話を焼いている他の動物の一種だと思っている証拠は他にもあります。
 以前にもお話しましたが、さんリキは待て命令がとっても苦手です。原っぱの真ん中に座らせ、「待て」と言って、私が背中を見せて歩きだします。15m歩いて、ハッと振り返ると、リキは確かに神妙におすわりをしていますが、よく見ると元々座っていた場所からは3mほど近くなっています。もう一度後ろを向いて10m歩いて振り返ると、またまたリキは移動をして、素知らぬ顔で座っています。後ろを向いて、すぐに振り返ると、リキが動いているのをを見つけました。リキみっけ。子供のときに遊んだ、だるまさんが転んだ、と一緒です。鬼になった子供が後ろを向いて、「ダールマさんがころんだ」と言っている間に、他の子供たちが鬼に近づきます。鬼に、動いている所を見かったら、「みっけ」と鬼に捕まります。鬼は、誰かに、背中をドンと触られたら、もう一度鬼をしなければなりません。ちなみに、私の住んでいる北大阪一帯では、この遊びのことを「最初の一歩」言っていました。鬼は「ダルマさんが転んだ」の代わりに「さいしょの一歩」と言って目を閉じます。リキ相手に、この「ダルマさんが転んだ」をやっても、結構あそべます。そのうち、両方ともがかなり真剣になってゲームをしていることにハッと気がつき、少しこっ恥ずかしくなりました。   
 しかし、自転車君がいると、リキは「ダルマさんが転んだ」はしません。自転車の側で、じっと待っています。自転車君から少し離れた所でおすわりをさせると、目を離したすきにすぐ自転車君の所に行きます。やはり、自転車君はお友達か仲間のようです。
 犬の訓練教本によると、犬に人間の前を行かせることは、マナー違反ということになっています。歩く時も、自転車でも、犬は人間の左側少し後ろに付かねばなりません。でも、さんリキは、どうしてもヒトより少し前に出たがります。リードを付けていても、付けていなくても同じです。ヒトより2-3歩前を行きます。冷蔵庫のドアを開けると、ヒトより先に顔をつっこみます。靴箱も同じです。今日は、どの靴を履くのかを確認します。実は靴によって、私がどこへ行くかが判ります。革靴は仕事、リキは関係ありません。ゴム長、確実に、お散歩か犬ぞり訓練です。スニーカー、ヨットには連れて行ってくれる時とそうでない時があります。急いでワゴン車の後ろに行って、存在を主張せねばなりません。ブリーフケースから書類を取り出そうとしても、旅行鞄から洗濯物のパンツを出そうとしても、リキの大きな顔がヌーと、こちらの顔の前に出てきます。ヒトと同じことをヒトより先にやりたいのです。タケノコを掘っても、ヒトより先にタケノコをくわえて引っ張ります。
 こんなリキですから、大好き自転車君と一緒にしたら、後ろを付いてくるわけがありません。自転車君につないだとたん、ワオ、ワオ、ワオ、犬ぞり隊出発のお定まりの大音響となり、自転車君の前足に噛み付きます。リードがもつれると危ないので、仕方がなく、こちらもGo、Go、Go、という事になり、自然発生的に犬ぞり隊が結成されました。
 実は、リキの名前は有名なそり犬の名前です。いちリキがわが家へ来る少し前、南極物語が上映されました。ちょっと可愛い子と見に行ったのですが、この物語とは関係がないので省きます。南極物語で、南極の冬を乗り切った太郎と次郎の話は有名ですが、リキは南極探検隊犬ぞり隊のリーダー犬だったのです。南極物語のエピローグでは、太郎や次郎を助けるため戦ったことになっていました。このとき以来、いつかは犬ぞりを扱いたいと思っていました。シェパードは、一日に50kmもそりを引いて走るのは無理かも知れませんが、側を走り、そり犬軍団の指揮をとらせる事はできるだろうと考えたのです。そして、わが家の最初のシェパードにリキという名前が与えられました。
 いちリキは、犬ぞり隊訓練は行っていません。模範的な警察犬訓練をこなしました。鼻がとっても良く、一回臭いをかかせると、確実に追跡ができました。真っ暗な夜、臭いを覚えさせたボールを、ススキとブッシュが生い茂る原っぱに投げます。ちなみに河内弁ではこのような所を「ガサンバラ」と言います。いちリキは時間は少しかかりますが、確実にボールを拾ってきました。見つけるまでは絶対に帰ってきません。見ていると完全なローラー作戦です。草原の端から順番に臭いを追って行きます。だんだんと臭いの強くなる方へ向かっていきます。反対方向へ行くと臭いが薄くなるのでしょう、くるっと向きをかえます。いちリキ時代、警察犬訓練と救助犬訓練が忙しく犬ぞり訓練をする時間がなかったのでした。
 にリキの時は、ローラーブレードを引っ張ってもらいました。Go、Goと言うと適当なスピードで走ってくれます。ローラーブレードとは、アイススケートのブレードの代わりに5-6個の車輪を付けたもので、インラインスケートともいいます。乗っている感覚はスケートよりもスキーに似ています。ただ、スキーのようにエッジを効かせて急停止ができないので、スピードのコントロールが重要です。にリキは、止まれの命令で急停止ができますから、ローラーブレードを引っ張るには都合がよかったのです。
 大阪城公園や、千里中央のセルシー広場で、よくローラーブレードに乗って遊びました。若い男の子ならまだしも、おじさんがローラーブレードに乗って、しかも大きな犬をつれて、店の中まで入ってくるので、モスバーガーのお嬢さんがびっくりして、それから吹き出しました。びっくりするまでは、理解できましたが、吹き出した理由は定かでありません。そのとき、セルシー広場には、スケートボード禁止と看板が出ていました。スケートボードは、サーフボードを小さくして車を付けたものです。スケートボードとローラーブレードは違うので、いいだろうと言う事で遊んでいましたが、しばらくして、「スケートボード等の遊戯禁止」の看板に変わりました。新しい文化が日本で発生しない理由はこの辺りにありそうです。
 さて、さんリキ、最初はローラーブレードで試しました。Go、猛然と走りはじめました。ものすごいスピードで左右のローラーブレードが横ゆれを始めました。最近流行の短いスキーに乗って直滑降でスピードを出すと左右のスキーがバラバラに横揺れをするのと同じです。あまりのスピードとローラーブレードの横揺れに恐怖を覚え、引き綱を離し、公園の散歩道の端石にブレードをぶつけて止めようとしました。スピードが早すぎたのです。私の体は水平に飛んで行きました。
 それ以後、さんリキ用訓練そりはマウンテンバイクにしました。左へ、右へ、まっすぐは理解します。犬ぞり用語の「ハイク、ハイク」は「Go、Go」と同じとも理解しました。しかし、「イージー」、「ゆっくり」は言う事を聞くまでなぜか、ワンテンポおくれます。マウンテンバイク犬ぞり訓練はなかなか快適で、豊中から箕面往復10kmなど、中距離走破もこなすようになりました。 公園の中のアップダウンのある荒れ地もこなします。ほんものの犬ぞりと一緒で、トレイル(道)のある方が走りやすいようです。だだ広いところは苦手です。他の犬と出会ったとき、リードが長いのでコントロールできるか、少し不安でしたが、リキは大得意で胸をはって他の犬の横を通り過ぎました。
 さて、そんなリキにほんものの雪の上でそりを引くチャンスが巡ってきました。そりと言ってもマーシャルが乗っているのはスキーです。どうもこのゲームはスポーツとしてすでに存在しているらしく、馬にスキーを引かせてスピードを競うゲームが昔の冬期オリンピックにあったと聞きました。あまりに危険なので、現在は馬を犬に代えて行われているそうです。
 もし、このゲームが冬期オリンピックに復活すれば、われわれは日本代表になるチャンスがあります。
 さて、雪の上での初体験、私もリキも十分に楽しんでいました。ところが思わぬ落とし穴がありました。先にも話しましたが、こちらがモタモタすると、リキはこちらを向いて叱咤します。リーダー犬の任務と思っています。一方こちらが履いているスキーは登山用のスキーですが、登山とスキーとどちらが主かと言われると、誰も滑っていない斜面を滑る事を最大の喜びとするための登山なので、スキーが主です。したがって、私のスキーには、アルペンのスキーと同様の金属のエッジが付いています。しかも私の常として、エッジはヤスリでピカピカに磨いてあります。こちらがモタとした瞬間リキが振り返りました。しばらくはそのまま走っていましたが、次第に雪面が赤く染まってきました。リキの右前足外側、右後ろ足、外側そして、左後ろ足内側が切れていました。大きい傷は長さ3cm、深さ1cmはありました。慌てて車に帰り、売店でテーピング用のテープを買い、私の靴下を履かせた上からテープで包帯をしました。幸い、出血は止まり、そのまま帰宅。当然、縫合をしなければならないと、次の朝包帯をとって驚きました。すでに、傷が盛り上がり始めています。
 外科学の教科書の第一章に創傷治癒の話が書いてあります。まず、メスですぱっと切ったような傷を縫い合わせると、創傷の一次治癒という過程でなおります。およそ1週で傷は閉じ、10日で完全に元にもどります。ところが、ざっくりと開いたような傷は、創傷の二次治癒と呼ばれる経過をとり、徐々に肉が盛り上がり、完全に癒合するには一月と書かれてあります。そして、ケロイドになります。二次治癒になるなと思ったリキの傷は、縫合もせずに、1週でほぼ癒合しました。一ヶ月もすると、完全に元通りの足になりました。
 さて、その後も犬ぞり隊訓練は続いています。夏の間は熱中症の危険があるのでお休みしますが、11月の最近は、毎日のように訓練です。さんリキも、もうじき7歳になり、口の周りに白い毛が目立つようになりました。猛然ダッシュも、加減をするようになっています。ペースを考えて走るのです。私も、リキも、生物学的年齢はほぼ一緒ですが、ほんものの犬ぞりレースに出る事をあきらめたわけではありません。南極はすでに犬の上陸を認めていません。南極に行く事はなさそうです。でも、環境保護と言いながら、スノーモービルや雪上車は良くて、犬がだめだ、と言う理由がよくわかりません。アラスカ位はチャンスがあるかもしれません。
 大糸線平岩駅から蓮華温泉を通り、白馬乗鞍岳へのルート工作は昨年と今年の春に、両方向から3回に分けて行いました。そのうち、平岩からの登りルート2回はリキもついて来ています。

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